Lesson1-1 チーズとは何か?

「チーズとは何か?」

この問いに答えるのは何よりも簡単で、かつ複雑なものがあります。 ひとことで言うとチーズとは「ミルクを何らかの方法で固形状にした食べもの」と定義することができます。

すると、ここに2つの新たな疑問が加わります。
「なぜ、ミルクが固まるのか?」
ということと、
「なぜ、ミルクを固める必要があるのか?」
ということです。
この2つの疑問を解き明かすことで、ひとまず「チーズとは何か?」という問いの核心に近づいてゆくことにいたしましょう。

チーズの誕生にまつわる民話

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チーズ誕生のきっかけとして、紀元前2000年頃のアラブにおもしろい民話が伝わっています。

むかしむかし、ラクダに乗った旅人が道中に喉が渇き、袋に入れて持っていたミルクを飲もうとしたところ、なんとミルクが固まっているではありませんか。袋は羊の胃袋で作られていたので、残っていたわずかな胃の酵素がミルクに化学反応を起こさせ、凝固させてしまったのです。
旅人はひと口その白いかたまりを食べてみたところ、これが美味しくてびっくり。それがチーズの 発見のはじまりだった、というものです。

この民話はチーズの誕生を説明する際によく引き合いに出されるエピソードですが、さて、このお話しに疑問を解く鍵はあるでしょうか。この民話のウソとホントをさぐり出すことで、謎の本質に迫ってみましょう。

なぜミルクが固まるのか?

上記のエピソードによって、ミルクを固めるのは羊の胃袋に含まれる酵素によるものだとわかります。しかし袋になってしまった羊の胃袋にミルクを凝固させるだけの酵素が残っていたものかどうかは疑問です。また、ミルクを凝固させる方法は酵素だけではありません。 ミルクを固める方法として、次の3つが挙げられます。

  • 熱で固める
  • 酸で固める
  • 酵素で固める

このうち、現在最も多く使われているのは酵素で固める方法ですが、チーズが最初に作られた際に使われた方法は、この民話の内容に反して、実は酸によるものだと考えられています。

■Lesson1-1 まとめ■

  • チーズ誕生のきっかけとして、ミルクを固めるのは羊の胃袋に含まれる酵素であるという紀元前2000年頃のアラブの民話が残っている。
  • ミルクを凝固させるには、熱、酸、酵素という3つの方法がある。