Lesson7-6 オランダのチーズ事情

オランダのチーズ製造の歴史は古く、紀元前から現在のオランダのある地域ではチーズが作られていました。そして現在、オランダが世界に誇る著名なチーズといえばゴーダ、次いでエダムでしょう。また、オランダではクミンやクローブなどのスパイスが入ったチーズが多いことも特徴的です。

ゴーダに次ぐオランダの人気チーズ、エダム。表皮が赤いワックスに覆われており、通称“赤玉”とも呼ばれています。オランダで生産されるチーズの九割はゴーダとエダムだそうです。 

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チーズ産業大国オランダ

Lesson7-5のチーズ生産国ランキングにてベスト5に入っているオランダですが、こと輸出に関しては以下のデータが示す通りです。

 ■2011年チーズ輸出国ベスト5■

1位 ドイツ(1,054,064トン)
2位 オランダ(688,473トン)
3位 フランス(669,173トン)
4位 イタリア(280,856トン)
5位 デンマーク(260,533トン)

さらに、人口比で考えるとチーズの生産量も輸出量もオランダは事実上ダントツの世界一になります。

現在のようなチーズ産業の活性化がはじまったのは16世紀以降。北海に面した立地条件から、作物の育ち難い水はけの悪い土地に加え、中世の数百年に渡る地盤沈下と海面上昇に悩まされ、多くの農家が穀物栽培から酪農業に切り替えました。国家もチーズ製造を重要な産業と考え、この活性化を後押しすることになります。
中世から海外への輸出も積極的に行い、17世紀に長崎の出島で日本に初めてチーズを伝えたのもオランダです。

現在もチーズはオランダの経済を支える重要な産業として、国を挙げてチーズ業界を盛り上げています。オランダの主要なチーズ市はゴーダ、エダム、アルクマール、ホールン、ウールデンの5つがあり、このうちウールデン以外の4つは現在でも定期的に伝統的な露店でチーズが販売されています。中世の時代から、大きめのチーズ市では年間数千トンのチーズが取引されるほどの盛況ぶりでした。

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チーズの工業化とアルチザンチーズの存続

オランダでチーズ工場が初めて誕生したのは1874年。そして20世紀初頭のピーク時には九州と同じくらいの国土に876カ所のチーズ工場がありました。その後、技術が進歩し、工場は合併を重ね、1990年代には63カ所に減少しましたが、チーズの生産量は工場の数に反比例してずっと増え続けています。

オランダの特徴的なところは、こうした工業化に対して、小規模の農家によるチーズ製造もそれなりに生き残ったところです。現在も工場と農家は対立する関係にはなく、自家製のチーズを作っている農家が、オフシーズンなどに乳牛を工場に貸し出したりして、工場と農家は持ちつ持たれつの関係を保っています。

アルチザンチーズ from オランダ

ゴーダ・ブーレンカース(Gouda Boerenkaas)

ゴーダのアルチザンチーズ版。「ブーレンカース」とは「農家チーズ」の意味。製造元になる農家が、2件以内の他の農家からミルクを集めて作っています。牧草のみで育てられた牛のミルクを低温殺菌せずに使用しているだけに、工場製とは比べられない美味しさです。最近やっと日本にも輸入されるようになりましたが、品薄なのでなかなか入手できません。

Gouda Boerenkaas