紀元前4世紀の大医学者、ヒポクラテスの著書と言われている『Ancient Medicine(古代医学)』にこんなことが書いてあります。
「チーズをよく食べる人に、そんなに食べたらからだに毒ですよ、なんて安易に諭してはいけません。(中略)ワインなどは確かに誰でも飲み過ぎるとからだを壊します。(中略)チーズに関しては、そんなことはありません。人によってはたくさん食べてもからだを壊さないばかりか、むしろ丈夫になるのです」
チーズの栄養価が高いというのは古代からわかっていたようです。
ヒポクラテス以外にも古代ギリシャ・ローマの文献にはチーズが「からだを暖め、滋養強壮の効果がある」などと書かれています。
ところがこの時代は同時に、こういう強力な食材は便秘になりやすい、という考えもあり、避ける人もいたようです。むしろチーズは乳酸菌がふくまれているので便秘解消によいのですが、この考えはルネサンス以降の中世ヨーロッパにも広まりました。ルネサンスとは、もとより古代ギリシャ・ローマ文化の復興運動ですから、あの時代の文献に書いてあることが影響を与えたのは当然のことなのかもしれません。
このような食物に関する誤解は、現代でもちらほら見受けられます。「チーズはカロリーが高いから太る」といった考えもそのひとつです。
本当は、チーズは人間のからだに大切な栄養素やミネラル分が、ほぼ完璧にそろっている、またとない栄養食なのです。また健康によいだけでなく、アンチエイジング効果もあることはご存知でしたでしょうか。
ただし、これは質のよいミルクと本来不必要な添加物などが入っていない、ナチュラルチーズにおいて当てはまる内容です。日本で多く見られる加工された安価なプロセスチーズは様々な添加物も多く、こちらで学ぶ効果とは異なる影響がある可能性もありますので、チーズ選びを楽しみながら本物のチーズを食していきましょう。
Lesson9ではそんなチーズの素晴らしい栄養と健康の効果について知識を深めていきましょう。