ご存知の方も多いかと思いますが、フランス人は食後にチーズを食べるという習慣があります。これはなぜでしょう。
この疑問を何度かフランス人に聞いてみたことがあるのですが、答えは昔から習慣でそうしているのだとか、よくわからないとか、胃の隙間を埋めて満腹感を得るためだとか、どうも皆さん答えが曖昧だったり、人によって言うことが違ったりで、要するにフランス人にも明確な理由を意識しているわけではないようでした。
ひとつの手がかがりを挙げるとすると、中世のヨーロッパではチーズは食後の消化を助ける働きがあるといくつかの医学書に書いてあるのです。例えば1600年にはボルドーのマルセリュというお医者さんが、腹の具合が悪い患者に薬としてチーズを処方したという記録が残っています。
これは実は根拠のあることで、チーズは発酵食品ですから、確かに消化を助ける働きがあります。例えば日本では一部で食事の最後に漬物を食べる習慣がありますが、これも同じことです。食べものが発酵する際に微生物が作り出す酵素が消化を促すのです。
(しかしこれも、発酵をさせて微生物が生きているナチュラルチーズの場合で、加熱加工して微生物が働かなくなったプロセスチーズには当てはまりませんので注意が必要です。)
チーズを食べることで、食べたものの栄養をしっかり吸収するという、昔の人の知恵が現在も生きているということなのかもしれません。