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飲み物と食べ物の組み合わせの妙を「マリアージュ」と言います。マリアージュとはフランス語で結婚の意味もありますが、日本では主に食べ合わせの意味、特にワインとの相性で使われることが多いようです。

ワインとチーズのマリアージュで思い出すのが18世紀ヴェネツィア出身の文筆家カサノヴァの言葉。

「シャンベルタンとロックフォールとの素晴らしい出逢いは、恋を芽生えさせ、たちどころに成就させる」

正直、カサノヴァは文筆家と言っても著名な作品はほぼ皆無に等しく、むしろ希代のプレイボーイとして歴史に残った人物ですが、ワインのシャンベルタンと青カビチーズのロックフォールとの素晴らしいマリアージュを恋愛になぞらえつつ、美味しいお酒とお食事で女性を口説くアイテムにつなげているところはさすが色事師にして文筆家のはしくれと言ったところでしょうか。

確かにワインとチーズの絶妙な組み合わせは百年の恋も実らせるかのような衝撃に満ちています。実はワインとチーズには壮大な共通点があるのです。どちらも古代メソポタミア文明で生まれ、同じ頃に中近東からヨーロッパに伝わり、発展と精錬を繰り返してきたこと。ギリシャ神話や聖書などの文学には神にその仲を祝福されているかのようにいつも一緒に登場すること。そしてどちらも発酵と熟成によって美味しくなるものであり、地域の風土に根付いた味わいを持つものであること。

ワインとチーズは数千年の蜜月の果てに我々のテーブルにあがっているくらいですから、たかが数十年の生命をもつ人間の恋愛ごとき、魔法にかけてしまうのは容易いことなのかもしれません。

Lesson12ではそんな素敵なワインとのマリアージュを中心に、チーズと相性の良い食べ物・飲み物と、合わせ方のコツを学んでいきましょう。