Lesson12-3 ワインと合わせる基本原則②

②味で合わせる

味で合わせることもポイントのひとつです。
同じような味のワインとチーズを合わせて調和させるケースと、逆に正反対の味を合わせてお互いの特徴を引き立て合ったり緩和したりするケースの2つがあります。

チーズの味とは具体的に酸味、塩味、脂肪分などの要素で考えます。
例えば酸味のあるシェーブルチーズやフレッシュチーズなどを、さっぱりとした白ワインやシードルなどと合わせます。正反対の味を合わせるケースでは、例えば塩味の強い青カビチーズやハード系のチーズなどと、甘いワインを合わせます。イギリスではクリスマスに食後のデザートとして、ブルースティルトンをポートワインとたしなむのが定番です。またチェダーとポートワインを合わせることもやります。一方、フランスではロックフォールと極甘のソーテルヌの組み合わせが絶妙です。

ブルースティルトンとポートワイン。

Joe Gough/Shutterstock.com

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ブルースティルトンをポートワイン漬けするという楽しみ方もあります。
スティルトンのかたまりの上部をくりぬき、そこにポートワインをそそいで2週間放置し、全体に浸透させます。これ以外にも上部に穴を空けてポートワインのボトルを逆さまに突き刺す方法もあります。クリスマスパーティーのデザート用ですが、さすが本国イギリスではやることが大胆です。

また、ワインとチーズを味で合わせるために覚えておくと便利な2つのコツがあります。

■塩味の強いチーズには酸味のあるワインを合わせる

これはワインの酸味がチーズの塩気を緩和させる働きがあるからです。青カビチーズやハード系のチーズは、きりっとした酸味の白ワインとも相性がよいのです。

■脂肪分の多いチーズは渋みのあるワインを合わせる

脂肪分の多いチーズは、タンニンの効いたフルボディーの赤ワインを合わせると、チーズの脂っぽさがワインの渋みによってすっきりし、同時にワインの渋みがチーズの脂肪分によってまろやかになります。

 

③香りで合わせる

ワインとチーズの香りの強弱が同程度のもの同士を合わせます。
例えば香りの強いチーズはフルボディーのワインと、あっさりしたチーズはライトボディのワインと合わせます。ワインの香りはその年のブドウの良し悪しでも違いますので、今年の某ワインは某チーズによく合う、なんてこともあります。

香りの合わせ方でひとつ重要な原則があります。

 ■ワインのブーケを損なわないチーズと合わせる

ワインには「アロマ」と「ブーケ」という、2種類の香りがあります。

  • 「アロマ(aroma)」とは原料のブドウによるフルーティーな香りを指します。
  • 「ブーケ(Bouquet)」とは発酵や熟成によって醸し出される香りを指します。

このワインのブーケを邪魔しない強さのチーズを選ぶことが大切です。ブーケが繊細なワインは、あまり熟成の進んだ風味の強いチーズは合わないとされています。ブーケがとても複雑で芳醇なワインは、よく熟したチーズでも問題ありません。

 

④熟成の度合いで組み合わせる

最後に熟成の度合いで合わせるという原則もあります。
これは前項で申し上げたワインのブーケとチーズの香りの理屈に関連するものがあります。あまり熟していないチーズに、あっさりとしたフルーティーなワインを合わせ、よく熟したチーズにはミディアムからフルボディの赤ワインを合わせます。

Plateresca/Shutterstock.com

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 幅広く合うもの

ワインとチーズのマリアージュにはあまり選り好みをしない、幅広く合わせられるパターンが存在します。
例えば白カビチーズのカマンベールなどは、どのワインでもだいたい難なく合うことができます。コンテやボーフォールなどのようなフルーティーな山のチーズや、ハード系のチーズもだいたいどんなワインにも合います。ウォッシュチーズは赤ワインのために開発されたチーズと言われているくらいなので、やはり赤ワインならだいたい美味しく合わせることができます。

また、赤ワインは比較的どのチーズにも合わせやすく、迷ったときはとりあえずミディアムボディの赤ワインを選んでおくと無難なマリアージュが楽しめます。

alexpro9500/Shutterstock.com

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ワイン以外とのマリアージュ

もちろんチーズに合う飲み物はワインだけではありません。ビールや日本酒などもワインで紹介した法則を当てはめることができます。

例えばビールには苦味があるので、ゴーダなどのような苦味のあるチーズに合います。チーズの苦味とは製造工程でレンネットを多めに使用したために発生する苦味ペプチドによるものです。また、カマンベールなどの白カビタイプの表皮の苦味やスモークチーズのスモークによる苦味もやはりビールと好相性を発揮します。
ベルギーやフランスにビールで表皮を洗って熟成させたウォッシュチーズがありますが、これらも同じ原料が使われている点でビールのお伴に最適です。あとはチェダーなどの塩分と旨味のしっかりとしたハード系のチーズはどれもビールに合います。

freeskyline/Shutterstock.com

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日本酒も意外にチーズとの相性は良好です。ワインと同じ法則を参照しながら、熟成や味の濃さによって、端麗な吟醸酒から濃厚な純米酒まで合わせてみてください。

お酒の飲めない方にはレモンを入れたペリエや紅茶などがおすすめです。

 

■Lesson12-3 まとめ■

  • 組み合わせには味で合わせることもポイントのひとつ。同じような味のワインとチーズを合わせて調和させるケースと、逆に正反対の味を合わせてお互いの特徴を引き立て合ったり緩和するケースがある。
  • チーズの味とは具体的に酸味、塩味、脂肪分などの要素で考えられる。
  • 塩味の強いチーズには酸味のあるワインを合わせる。これはワインの酸味がチーズの塩気を緩和させる働きがあるからである。
  • 脂肪分の多いチーズは渋みのあるワインを合わせる。そうすることでチーズの脂っぽさがワインの渋みによってすっきりし、同時にワインの渋みがチーズの脂肪分によってまろやかになる。
  • 香りの強いチーズはフルボディーのワインと、あっさりしたチーズはライトボディのワインなど香りで合わせるのもポイントのポイント。またワインのブーケを邪魔しない強さのチーズを選ぶことが大切である。
  • 熟成の度合いで合わせるという原則もある。あまり熟していないチーズに、あっさりとしたフルーティーなワインを合わせ、よく熟したチーズにはミディアムからフルボディの赤ワインを合わせる。
  • またどんなものにでも幅広く合うものもある。白カビチーズのカマンベール、コンテやボーフォールなどのようなフルーティーな山のチーズや、ハード系のチーズなど。またウォッシュチーズは赤ワインならだいたい美味しく合わせることができる。
  • 赤ワインは比較的どのチーズにも合わせやすい。
  • ワインだけでなく、ビールや日本酒など、他のお酒とのマリアージュも楽しめるのがチーズの魅力。ワインと同じ法則を参照しながら好みのマリアージュを見つけることができる。