Lesson2-2 チーズの製法① 搾乳

チーズを作るための最初の工程は、その原料であるミルクを絞ることから始まります。

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良いチーズが出来るかどうかは、原料になるミルクの質にかかっていると言っても過言ではありません。

チーズの原料となるミルクは牛、山羊、羊、水牛などから搾乳されます。

この中で圧倒的に多いのは牛ですが、その他のミルクを使ったチーズも根強い人気があります。例えばイタリアで水牛のミルクを使ったモッツァレッラチーズは牛のミルクを使ったものより質が高いとされ、フランス では山羊のミルクを使ったチーズを「シェーブルチーズ(Fromage au lait de chèvre)」としてチーズの主要カテゴリのひとつに設けています。

ミルクの殺菌について

搾乳したミルクはほとんどの場合、まず低温で殺菌されます。
殺菌方法は短時間で65度くらいまで熱し、同じ時間で0度まで冷やします。これによって低温菌と好熱菌の両方を一時的にほとんど消滅させることができます。 低温で殺菌するのは、高温で加熱してしまうとチーズの凝固に必要なタンパク質がダメージを受けてしまうためです。

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日本では100%の殺菌が義務づけられています。これはミルクは搾乳されるとすぐに空気中の雑菌が繁殖し、変質しやすくなるためです。

一方でヨーロッパでは約4分の1のチーズが無殺菌のミルクによって作られています。 アメリカでは60日以上熟成させるチーズに限って無殺菌のミルクを使用することが許されています。

無殺菌のミルクは殺菌されたものと比べて扱いが難しく、油断をすると雑味が出たり悪玉菌が 繁殖して傷みやすくなったりしますが、チーズの製造者によって複雑な味わいの違いが出やすくな り、元の素材の個性が最大限に活かされたチーズができあがります

殺菌されたミルクでは乳酸菌の活動も停止しているため、培養された乳酸菌(スターター/次項参照)を投入し、こちらの乳酸菌を基に発酵されます。そのため、味は安定し大量生産に向いていますが、製造者ごとの個性は平坦になります。

無殺菌のミルクと殺菌されたミルク、どちらがいい?

無殺菌のミルクと殺菌されたミルク、ともに一長一短あるのでどちらが良いとは簡単に言えませんが、ヨーロッパでは無殺菌のミルクによって作られたチーズの方が優れて高価だと考えられています。

■Lesson2-2 まとめ■

  • チーズを作る工程は搾乳から始まる。チーズの質はミルクの質にかかっているとも言われる。
  • チーズの原料となるミルクは牛、山羊、羊、水牛などから搾乳される。
  • 搾乳したミルクは低温殺菌処理を行う。低温で殺菌するのは、高温で加熱してしまうとチーズの凝固に必要なタンパク質がダメージを受けてしまうためです。
  • 日本では100%の殺菌が義務づけられているが、ヨーロッパでは約4分の1のチーズが無殺菌のミルクによって作られている。また アメリカでは60日以上熟成させるチーズに限って無殺菌のミルクを使用することが許されている。
  • 無殺菌のミルクは殺菌されたものと比べて扱いが難しいが、複雑な味わいの違いが出やすくな り、素材の個性が最大限に活かされたチーズができあがる。
  • 殺菌されたミルクで作られたチーズは、乳酸菌(スターター/次項参照)のみによって発酵される。味は安定し大量生産に向いているが、製造者ごとの個性は平坦となる。