チーズの種類が最も変化に富んだものに枝分かれするのがここからの工程です。
前の工程で固まったカードを型に入れて形を整え、塩を加えてからその後、熟成させます。 セミハードチーズ、ハードチーズと呼ばれる生地が硬い種類のチーズは、型に入れた後、圧搾します。
加塩について
加塩のタイミングと方法はチーズの種類によって異なります。塩水に漬ける(ブライン法)、表皮に塩をすりこむ(乾塩法)等、様々です。ブライン法の場合は塩水に漬け込む期間によって塩分濃度を調節します。
チェダーチーズのように型に入れる前に、細切れにしたカードに直接塩をふりかける特殊なケースもあります。
塩を加えるのは味だけの問題ではありません。その他にも雑菌の繁殖を防ぎ、熟成に必要な菌種の働きを促進する目的もあります。また、大型サイズのチーズにおいては硬い表皮を形成し、生地を保護する目的や、微生物の働きをコントロールし、長期に渡ってゆっくり熟成させ、味に深みを出す目的もあります。
熟成について
チーズは熟成することで、独特で複雑な旨味と風味が生まれてきます。 熟成とは一言でいうと、主に乳酸菌などの微生物の働きによるものです。
期間は数週間、数ヶ月のものから数年に渡るものまで様々です。その熟成期間中に乳酸菌などの微生物の働きによってタンパク質が分解され、アミノ酸が生成され、じっくり時間をかけてそのチーズならではの味わいを深めてゆくことになります。
チーズの熟成期間中、最も大切なのは微生物が働く環境を維持することです。 乳酸菌は「嫌気性」と言って空気に触れることを嫌いますので、チーズを固く圧縮したり白カビで覆ったりするのは乳酸菌を空気から守る役割もあります。
また、熟成には年間を通じて一定の温度と湿度を保っている環境が必須になり、人の体温までもが厳しくチェックされたという逸話もあるほどです(チーズコラム③参照)。その環境には岩盤をくりぬいた地下室や、壁の厚い石造りの熟成室、石灰岩の洞窟などが適しています。
このように難しい熟成の工程ですが、チーズには「熟成士」と呼ばれる、チーズの熟成過程のみに携わる専門の職人がいます。熟成士はチーズの熟成期間中、定期的に具合をチェックし、チーズを正しい成熟に導きます。熟成士はフランスではアフィヌール(affineur)、イタリアではアフィナトーレ(affinatore)と呼ばれ、農家などで作った未成熟のチーズを買い付け、自分のところで熟成させ、販売する業者としてフランスなどでは一般的な呼称となっています。
熟成のあれこれ
熟成方法の種類としては外側に白カビの胞子を吹き付け、白カビによって熟成させるもの、これがカマンベールやブリーチーズに代表される「白カビ系」。
青カビによって熟成させるもの、これがブルーチーズに代表される「青カビ系」。
(名前は似ていますが、ブリーチーズとブルーチーズは別物になります)
また、型取りしたチーズの表面を塩やアルコールなどで定期的に洗う「ウォッシュ系」というものもあります。
チーズの水分をより丹念に抜き、型に入れて長期に渡ってじっくり熟成させる非常に硬質のチーズは、その硬さによって「セミハード系」「ハード系」に分類されます。
「セミハード系」の代表的なものとして、オランダのゴーダチーズや、チェダリングという独特の製法でチーズを固めて熟成させるチェダーチーズがあります。 「ハード系」ではイタリアのパルミジャーノ・レッジャーノが有名で、この英語名がパルメザンです。
日本にはアメリカ経由で粉チーズの形態で入ってきたので、粉チーズの代名詞のようになっていますね。
■Lesson2-5 まとめ■
- フレッシュチーズ以外のチーズは固まったカードを型に入れて形を整え、塩を加えてからその後、熟成させる。
- セミハードチーズ、ハードチーズなど生地が硬い種類のチーズは、型に入れた後圧搾する。
- 加塩のタイミングと方法はチーズの種類によって異なり、塩水に漬ける(ブライン法)、表皮に塩をすりこむ(乾塩法)等、またチェダーチーズのように型に入れる前に、細切れにしたカードに直接塩をふりかける特殊なケースもある。
- 独特で複雑な旨味と風味が生まれるチーズの熟成は、主に乳酸菌などの微生物の働きによるものである。
- チーズの熟成期間中において最も大切なのは微生物が働く環境を維持することである。
- 乳酸菌の空気に触れることを嫌う性質を「嫌気性」といい、チーズを固く圧縮したり白カビで覆ったりするのは乳酸菌を空気から守る役割もある。
- 熟成には年間を通じて一定の温度と湿度を保っている環境が必須となり、岩盤をくりぬいた地下室や、壁の厚い石造りの熟成室、石灰岩の洞窟などが適している。
- チーズにはチーズの熟成過程のみに携わる専門の「熟成士」という職人がいる。
- 熟成方法により様々なチーズの種類がある。
- 外側に白カビの胞子を吹き付け、白カビによって熟成させる「白カビ系」…カマンベールやブリーチーズなど
- 青カビによって熟成させる「青カビ系」…ブルーチーズなど
- 型取りしたチーズの表面を塩やアルコールなどで定期的に洗う「ウォッシュ系」
- 水分を丹念に抜き型に入れて長期間じっくり熟成させる非常に硬質のチーズは、その硬さによって「セミハード系」「ハード系」に分類される。
- セミハード系…オランダのゴーダチーズ や、チェダリングという独特の製法でチーズを固めて熟成させるチェダーチーズなど。
- ハード系…イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノなどが有名。