Lesson3-2 プロセスチーズの魅力とは

本格的なチーズ好きの方は、種類が豊富で深い味わいをもつナチュラルチーズを好み、プロセスチーズはあまり口にしない方が多いでしょう。しかしプロセスチーズにはプロセスチーズにしかない魅力もあるのです。

活用しやすさNo.1!プロセスチーズの秘密

プロセスチーズは品質が安定しているため、その加工しやすさにより日本ではチーズ食品が多くみられます。

プロセスチーズは溶かして乳化させるという工程を踏みますが、この「乳化」とは、例えば水と油のように、通常なら混じり合わない2つの液体が混ざり合っている状態を指します。もう少し具体的に言うと、2つの液体のうちのひとつが微粒子になり、もうひとつの液体の中に分散して浮遊している状態です。 ナチュラルチーズを加熱し、溶かしてしばらくすると、自然とタンパク質・脂肪・水分が分離してしまいます。つまり、ただ溶かして再び固めるだけではプロセスチーズはできないのです。ここにリン酸塩やクエン酸塩などの、乳化を促す「乳化剤」を投入する必要があります。

プロセスチーズのヒントはチーズ・フォンデュ!?

フランスにチーズ・フォンデュという、チーズを白ワインで煮込んでパンや野菜をつけて食べる料理がありますが、チーズ・フォンデュのチーズは完全に乳化しており、タンパク質や脂肪が分離することはありません。これは白ワインに含まれる酒石酸塩が、乳化剤の役割を果たしているからです。

プロセスチーズはまさにこのチーズ・フォンデュをヒントに開発されたものなのです。 チーズ・フォンデュの「チーズ」の部分をフランス語にして「フロマージュ・フォンデュ(fromage fondu)」と言うと、これはフランス語で「プロセスチーズ」そのものの意味になります。ちなみにチーズ・フォンデュのフランス語は「fondue au fromage(フォンデュ・ オ・フロマージュ)」あるいはただ「fondue(フォンデュ)」とだけ言います。

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溶けないチーズ?

また、プロセスチーズはナチュラルチーズのように加熱しても再びとけることがありません。これはチーズは溶かして固める度にカゼインの結束力が強くなり、溶けにくくなっていくという特徴があるからです。巷でプロセスチーズなのに「溶けるチーズ」として売られている商品がありますが、これは恐らく原料になるべくモッツァレラのような新鮮なチーズを使い、なおかつ、低温で溶かして、カゼインの結束が強力になりすぎないようにしているものと思われます。

プロセスチーズが流行した理由

プロセスチーズは20世紀はじめに開発され、アメリカとスイスを中心に急速に広まりました。 これはプロセスチーズの品質が変わらず保存しやすいという点が、第1時世界大戦中の兵士の栄養補給に適しているとされたという背景があります。

日本には戦後、日本人の栄養補給に良いということでアメリカから紹介され、それ以来日本ではほんの十数年前までチーズといえばプロセスチーズのことを指すものでした。 日本人は海外から入ってきたものを独自の発想で加工するのが得意な民族ですので、プロセスチーズの加工しやすい点が性に合っていたのも、プロセスチーズが日本に定着し発展した要因の1つとも考えられています。

例えばカマボコとチーズを合体させた「チーカマ」などはその最たる例で、パンと日本古来の餡を合体させたアンパンと並んで、日本人の発明した加工食品の代表と言えるでしょう。カマボコを製造するには高温で蒸し上げる必要がありますが、プロセスチーズは熱を加えても組織がしっかりしており溶けにくいので、チーカマのような商品への加工に適していたというわけです。

■Lesson3-2 まとめ■

  • プロセスチーズは品質が安定しているため、その加工しやすいというメリットがある。
  • プロセスチーズはチーズ・フォンデュをヒントに開発されたものと言われている。
  • プロセスチーズは20世紀はじめに開発され、アメリカとスイスを中心に急速に広まり、日本では戦後に持ち込まれてからほんの十数年前までチーズといえばプロセスチーズのことを指すものであった。